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ECMとアンクルトム

ECM …Editions of Contemporary Music の略称、西ドイツで立ち上げられたレコード会社名だ。- 味わい深いコンテンポラリー音楽CD作品の数々を制作してきたカリスマ的レーベル。その昔、目黒区/自由が丘に“アンクルトム”というクラブ(ライヴハウス)があった。僕が30代の頃に全盛期を迎え、確か18年ほど前(?)に閉店してしまったお店で、横尾知記さんというオーナーが経営されていた。ライヴ生演奏は週に2〜3 Night で、通常はライヴ演奏無しの Music Bar 営業だった。お店の特徴は、ECM レーベルのCDしか BGM として店内では流さない!という(比類無き)徹底ぶりの超個性的なお店だった。オーナーの横尾さんが強烈な ECM フリーク〜信奉者で(公言こそなさらなかったけれど)、「音楽レーベルは、ECM だけが存在していればそれで十分」(笑)と言わんばかりの主義主張。地下店内は薄暗いムーディーなアンビエント間接照明に、30名くらいの客席キャパ、音の響きも気持ち良く、グランドピアノに沿って円周席もあり、それなりに素晴らしいオーディオシステムで心地良く鳴り響く ECM 音楽のCDボリュームも小さ過ぎず大き過ぎずで、時間の流れが止まるようなシュールで不思議な空間だった。自慢のピザがとても美味しいこともあり、自由が丘エリア在住(であろう)地元固定ファンも居らっしゃったし、疲れを癒やしに来る勤務帰りの壮年サラリーマンや常連の男女カップルも多かったと記憶している。ライヴプログラムは…いわゆるジャズ演奏家でありながらも(フリージャズでは無いけれども)そのカテゴライズから逃れようとする新主流派の若手プレイヤー達や、エスニックコンテンポラリーに可能性を見いだそうとするような独創的ワールドミュージック系プレイヤー達が多く出演していた。僕も30代半ば〜後半だったその頃、いわゆる合衆国のジャズ伝統美を追いかけることにいささか疲れ果て、未来の自分の音楽はどうあるべきなのか?…と日々暗中模索していた過渡期であったので、(その迂回路として?)ECM 音楽の思想や美意識に傾倒していた時期でもあった。そんな背景もあり、オーナーの横尾さんからは大切にかわいがっていただき、月2回くらい出演させていただいたことは、とても懐かしい宝の想い出だ。そんなある日、お店が突然閉店してしまって、もう20年近いかな〜。それ以後、横尾さんとはたったの一度たりともお会いしていない。…今でも ECM のCD作品を聴くたびに、彼のことと“アンクルトム”のことを時々想い出すが、お元気であることを願うばかりである。あの頃にアンクルトムで出会った ECM / CD作品は(数えたことはないが)100枚はくだらないと察する。あの音の栄養〜ビタミンが無かったら、あの頃に友好を深められた演奏家同志が居なかったら…今の自分の音楽スタイルはおそらく確立できていなかったであろうと思う。横尾さんには報恩感謝の想いでいっぱいだ。ご健在でいらっしゃるならば、是非是非お会いして、今改めて感謝を伝えたい。

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